「忘れる女、忘れられる女」酒井順子著
週刊誌の連載人気エッセーの書籍化。
ある日、バスの中でおばあさんがおばあさんに席を譲る場面に遭遇。そこに日本の近未来の姿をみたような気がしたという著者は、寿命が延びたといってもそれは若い時間が延びるわけでなく、おじいさんなりおばあさんなりでいる時間が長期化するということだと悟る。未来の日本は、年寄りで満員のバスのようなもので、高齢者だからとシルバーシートに座っていられるわけではないと、やがて自分も仲間入りする生々しい老老社会について夢想する。
そのほか、自分と同じ「子ナシ独身」女性知事誕生への思いや、スキャンダルが発覚して謝罪する人たちの髪形など。身近な日常の断片や世の中の話題を俎上に時代を切り取る。
(講談社 1300円+税)