安倍政権が日本を「武器輸出大国」に変質させる
戦後70年にわたり「戦争をしない国」を築き上げてきた日本。世界に誇るべきこの足跡が今、安倍政権によってかき消されようとしている。池内了、青井未帆、杉原浩司編「亡国の武器輸出」(合同出版 1650円+税)では、「防衛装備移転三原則」により軍需産業強化の政策が進む現状に警鐘を鳴らしている。
日本が平和国家であることの基本原則といえる「武器輸出三原則(武器輸出禁止政策)」。1967年に佐藤栄作内閣が示した(1)共産圏諸国(2)国連決議による武器禁輸対象国(3)国際紛争の当事国またはそのおそれのある国への武器輸出を認めないとする三原則に、三木武夫内閣が1976年に(1)三原則対象地域については武器の輸出を認めない(2)それ以外の地域については武器の輸出を慎む(3)武器製造関連設備の輸出は「武器」に準じて取り扱うという強化案を示し、戦後日本を支えてきた。
ほんの10年ほど前までは、外務省も武器輸出三原則を平和国家の実績として挙げていた。2005年に発表された外務省による「平和国家としての60年の歩み」の中でも、「(わが国は)武器の供給源とならず、武器の売買で利益を得ない」と述べている。
ところが、安倍政権は武器輸出を成長戦略の一環に据え、大学での軍事研究の旗振りをするなど“武器を輸出しないこと”と“平和国家であること”の分断を図った。2014年に閣議決定された「防衛装備移転三原則」では、紛争の当事国に武器を輸出しないとの文言は残されたものの、“紛争当事国”の定義を極めて狭く限定。「武力攻撃が発生し、国際の平和及び安全を維持しまたは回復するため、国際連合安全保障理事会がとっている措置の対象国」以外には、武器の輸出を可能にしてしまった。ちなみにその対象国とは、アフガニスタンやイラク、北朝鮮など世界でわずか10カ国のみだ。
安倍政権による強引な憲法9条改悪の動きの中、「武器輸出大国」への進行が進めば、もはや日本は平和国家ではなくなる。戦後70年にわたり築き上げてきた国と社会のありさまを壊すのは簡単なことだ。しかし、一度壊れてしまえば、再び元に戻ることはない。武器と平和を巡る問題を、改めて考えなければならない。