「草地は緑に輝いて」アンナ・カヴァン著 安野玲訳
「わたし」は旅先でいつも不思議な草地に出合う。その草地は必ず斜面にあり、まぶしいほど輝く草が茂っている。その緑の壁に沿って、半裸の人間が滑車に通したロープで吊るされている。何かの刑罰のように見えるが、通りかかった町の人の説明によると、彼らは草刈りをしているのだという。草刈り人は最下層出身で、使い捨てにされるのだ。
「わたし」が草地を見上げて立ち尽くしていると、周囲に闇が集ってきて、家々の輪郭も見えなくなってきた。ところが、闇の前進は草地の手前でピタリと止まった。あの草の燃えさかる緑が、全力で闇の行く手を阻んでいる。
奇妙な世界を描く、本邦初訳の短編集。
(文遊社 2500円+税)