「あめつちのうた」朝倉宏景著
阪神園芸に入社して、グラウンドキーパーになった雨宮大地。巨人のツーランホームランに「っしゃあ!」とガッツポーズを決めた瞬間、室内の温度がすうっと冷めた。先輩の甲斐が「まさか巨人ファンちゃうやろな?」。
東京の実家を出るとき、母に、巨人ファンであることを隠し通すように言われたのに。ずばぬけて運動神経がある父に似なかった大地は、高校3年のとき、野球部の記録員として甲子園に来た。試合に負けて甲子園の土を拾うエースをカメラマンが執拗に狙った。そのとき、それを遮ってくれたのがグラウンドの整備員だった。それを見て、大地は「ここに戻ってきたい」と切望したのだ。
野球の聖地・甲子園を守る裏方を描く。
(講談社 1600円+税)