「ジョージ・オーウェル」川端康雄著
「動物農場」や「一九八四年」などで知られる英国人作家ジョージ・オーウェルは、東西冷戦期に米国がその作品を冷戦プロパガンダの材料に用いたため、当時は「反ソ・反共」の作家として認識され、敬遠されていた。
しかし、1980年代のブームを経て、今改めて個人の自由の制限や監視社会化に警鐘を鳴らした人物として世界中で再評価されている。
その作品が、政権の数に任せた横暴や、反民主主義的傾向の増大、新自由主義経済の弊害など、現代の私たちの身近な世界の危機を表現しているからだ。
1903年に生まれ、結核によってわずか46歳でこの世を去ったオーウェルの人生の軌跡とその作品群をたどりながら、その思想や行動原理に迫る評伝。
(岩波書店 880円+税)