コロナ禍中のSDGs
「SDGs投資」渋澤健著
まだ先の見通せないコロナ禍。そんな中で果たして持続可能な成長など実現できるのだろうか。
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投資といえば一発丸もうけ型のバブリーなイメージがいまも強い。だが、本書のねらいは違う。大河ドラマで一躍注目される渋沢栄一の子孫で投資信託の創業会長が「資産運用しながら社会貢献」(副題)をめざすとするのが本書だ。
実は著者は「社会貢献」ということばには「余裕ある自分が誰かのためにやってあげている」という、上から目線の意識があるようで好きではないという。
ネオリベ経済政策の元祖ミルトン・フリードマンは「会社の社会貢献は利益の最大化」といった。しかし現代は先進世界のどこも右肩上がりの経済ではない。SDGsの思想は投資の世界でも「リスク低減」や「ビジネスチャンスの可視化」など新たな価値観の起爆剤となった。本書はそんな話をわかりやすく紹介しながら、「成長の持続性」と「投資」の関係を具体的に指南する。
強欲な資本主義に対抗し、目先ですぐに結果が出なくても焦らずあわてず、長期の投資元でいつづけられるような投資先を見つけるための視点や心構えまで解説。自身が経験した失敗談なども惜しげもなく披露し、持続可能な資産運用のしかたを説いてくれる。
(朝日新聞出版 810円+税)
「SDGs」南博、稲場雅紀著
いまだ先の見えないコロナ禍。しかし本書は「逆さに見れば、『危機の時代を導く羅針盤』としてのSDGsの真の価値を再発見できるかどうかが問われている」ことでもある、という。要はコロナ禍からの脱出をSDGsの進展と掛け合わせることが大事ということだ。本書は日本政府のSDGs交渉の首席担当官をつとめた外交官らによる指南書。
国連でのSDGs交渉がどのように進展してきたか、先進国と途上国の思惑の食い違いなどを具体的に解説。単なる空理空論ではない、現実的に可能な政策レベルのSDGs論が繰り広げられている。
(岩波書店 820円+税)
「生物多様性を問いなおす」高橋進著
地球環境には「生物資源」と人類の「生存基盤」という2つの価値がある。これらを統合したのが「地球公共財」。国家同士で争っても地球はひとつしかない。ならば国家間の対立は解消するしかないのが唯一の選択肢。農学者で環境庁の官僚だった著者は、環境政策の現実を見据えながら理非曲直を説く。
90年代は国際的に環境問題への関心が盛り上がった時期。21世紀に入ると「ミレニアム開発目標」(MDGs)が唱えられ、これが今日のSDGsに引き継がれた。他方で国家間対立は強まり、政策理念は逆風にさらされる。果たして何が可能で、どうあるべきか。その根本を問う。
(筑摩書房 880円+税)