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「うんこの博物学」ミダス・デッケルス著 山本規雄訳

 コロナ禍で自宅時間が長くなったおかげでトイレもきれいになったとか(笑い)。書店に並ぶウン×の雑学に耳を傾けてみよう。



 一見、典雅な西洋絵画をあしらった表紙。ところが! よーく目を近づけると、なんと18世紀のおフランス宮廷婦人がドレスの裾をまくりあげ、股間におしっこを受ける皿を当てがっているという絵が! 著者はオランダの生物学者だそうだが、その博学たるや。文豪バルザックいわく、「硬さがちょうどいいウンコの快感にまさるものなど何もない」。

 宗教改革のルターは神の偉大さをたたえようとして人の世を「巨大なひとつの尻の穴」と呼び、矮小な人間は「熟れたウンコ」程度だと称した。ずっと下って20世紀。ヒゲもじゃのおっさんがしゃがんで野糞を垂れている連続写真は、なんと画家ロートレックが浜辺で見せた「決定的瞬間」なんだとか。

 随所に絶妙の挿絵が配置されて、ページを繰るたびに新しい発見と笑いが生まれる。ついでながら巻末の版元広告には「男色の日本史」「ホモセクシャルの世界史」「お尻とその穴の文化史」等々の書籍広告がずらりと並ぶ。

 最後まで感興豊かなウン×文化論である。

(作品社 3190円)

「13億人のトイレ」佐藤大介著

 インドのトイレ事情といえば聖なるガンジス川は糞尿垂れ流しなんていう失礼な連想が湧いてしまうが、共同通信ニューデリー支局員だった著者によれば、インドのトイレ事情はカースト制と大いに関係があるという。田舎ほど野外排泄の習慣が根強く、いまだ5億人がトイレのない暮らしを送っているのだ。

 経済指標では将来有望という言い方は、数字だけしか見ない上から目線。著者はむしろ「下から目線」でトイレに注目したというわけだ。下水掃除を素手で行う現場のルポなど外国人の特派員だからこそだろうが、それでも欧米の記者は挑戦しないのではと思われる。

 清掃を担当するのは最下層民の「ダリット」。そもそも農村部では家の近くにトイレをつくること自体、暮らしの場に不浄なものを持ちこんだと嫌がられることが多いという。経済紙が伝える「有望な投資先」としてのインドのイメージが大きく変わること請け合いだろう。

(KADOKAWA 990円)

「うんちの行方」神舘和典、西川清史著

 還暦前後のおじさん2人が、三鷹のおしゃれなカフェで閉店までウン×談議にふけった。

 周りの席はいつしか空っぽ。それでも2人は意気揚々と旧知の編集者に話を持ちかけたらしい。で、取材の結果できたのが本書。

 もしタワマンで全世帯が一斉にトイレを流したらどうなるか。専門家は断言する、「百パーセントあふれます!」。そんな雑知識を満載したのが本書。

 新型コロナウイルス問題にも関係する。肺炎を起こすコロナウイルスは呼吸器が注目されがちだが、実は消化器を通ってウイルスが排泄される。

 欧米では既に研究が始まっており、昨年3月に著者らが横浜の下水処理施設を取材したころ、日本ではようやく注目が始まったという。ウォシュレットの開発や鉄道の排泄物処理、富士山でトイレットペーパーが描いた「白い川」など数々のウンチクが豊富に盛られている。

(新潮社 792円)

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