「桃太郎は鬼ヶ島をもう一度襲撃することにした」森達也著
フリーのテレビディレクター、キジこと恭一は桃太郎から2回目の鬼ヶ島取材の依頼を受ける。6年前、「正義のジャーナリスト」桃太郎は、恭一らスタッフと鬼ヶ島に乗り込んだ。
かつて反社会的な存在だった鬼は、今は無人島でほそぼそと自給自足の生活を送っていた。しかし桃太郎は、あいつらが改心などするはずがないと、まるで彼らが危険で凶暴な存在であるかのように報道。映像はアングルや撮影ポジションが変われば全く異なる光景が現れるからだ。その報道で一躍、名をはせた桃太郎は二匹目のどじょうを狙っているようだ。(「鬼ヶ島再襲撃」)
他にも、「王様の耳はロバの耳」とSNSで発信してしまう髪結い人が登場する「ミダス王」など世界の名作をパロディー化して現代社会の歪みを風刺する「現代寓話集」。
(ワニブックス 990円)