「水の墓碑銘」パトリシア・ハイスミス著 柿沼瑛子訳
36歳のヴィクは、祖父の遺産で何不自由ない暮らしをしている。一方、年の離れた妻のメリンダは娘を出産後、手当たり次第に愛人をつくり、2人は家庭内別居中。周囲は離婚を勧めるが、ヴィクにその気はない。ただメリンダが選ぶ男たちの軽さや浅はかさが許せない。
今夜も、友人宅でのパーティーで、メリンダは夫に見せつけるように、新しい恋人の出張セールスマン・ナッシュと踊りに興じている。平静を装うヴィクは、話しかけてきたナッシュに、メリンダの以前の恋人が殺害された事件に自分が関わっていることをほのめかす。その嘘が気に入ったヴィクは、ある夜、本当に妻の新しい恋人をプールに沈めてしまう。
昨年、生誕100年を迎えた巨匠の長編傑作の改訳版。
(河出書房新社 1210円)