「月の光の届く距離」宇佐美まこと著

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 都立高校に通う平凡な女子高生・美優は2年生の春、妊娠した。同級生の恋人・准也に告げると逃げ腰になり、両親は美優を罵倒。家を追い出された美優は、池袋で知り合った曜子に仕事を紹介され新宿・歌舞伎町に出向くが、そこは妊婦もOKの風俗だった。

 店を飛び出したあと美優は、偶然にNPOを運営する千沙と出会い、彼女の勧めで奥多摩にあるゲストハウス「グリーンゲイブルズ」で働きながら出産に備えることになる。そこでは明良と華南子の兄妹が、家庭環境に恵まれない子どもの里親をしながら、認知症初期の母・類子と共に暮らしていた。

 美優はグリーンゲイブルズで暮らすうちに類子が世界的デザイナーだったこと、明良と華南子には事情がありそうなこと、そして自分を助けてくれた千沙は幼い頃、児童ポルノのモデルにされていたことを知る。

 話題作「展望塔のラプンツェル」に続く、家族の在り方を問う長編ミステリー。

 里子たちの背景にある虐待や貧困、夜の街を徘徊(はいかい)する子どもたちの家庭事情、明良の壮絶な過去など、子どもたちを巡る社会問題を浮き彫りにしながら、さまざまな家族の形を描き出す。果たして美優が赤ん坊のために選んだ“月の光の距離”とは──。

(光文社 1870円)


【連載】週末に読みたいこの1冊

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