「古典モノ語り」山本淳子著
平安時代の牛車にはグレードがあり、最も格式が高い唐庇車(からびさしのくるま)は上皇、皇后、親王らしか乗れなかった。四位以上の公卿らが乗る檳榔毛車(びろうげのくるま)は品格にふさわしく、ゆっくり走らせるのがいいと清少納言は書いている。
あるとき、清少納言らはホトトギスの声を聞こうと公用車を用意させた。卯の花を御簾や棟木などに差し、動く花垣のように飾り付けて、藤原公信の屋敷前に乗り付けた。中宮定子に敵対していた公信に、自分たちが自由に大内裏の門を出入りできることを見せつけたのだ。(「牛車」)
ほかに、贈答品として用いられていたのに、なぜか「大和物語」には贈るのは不吉だとされている扇など、古典に出てくるモノを通して平安貴族の日常を紹介する古典の入門書。
(笠間書院 2090円)