「幕末の女医、松岡小鶴」門玲子編著
日本の民俗学の父・柳田国男、画家・松岡映丘の祖母、松岡小鶴は、江戸時代にまだ珍しかった女医だった。養子の夫を父に離縁され、父の死後、医業を継いだ。女性には珍しく多くの漢詩を残しているが、ナメクジと対話する作品もある。
「うねうね腹這って生涯を終えるまでに、一尺も動くだろうか」とからかうと、ナメクジは「洪鑢我に賦う些かの形と気 人神機と喚も我焉んぞ知らんや(万物を造り出す天の大きな溶鉱炉が、私にこの小さな形と気を与えた 人はこれを神の働きと言うが、私がどうしてそれを知ろうか)」と答える。
ユーモラスだが哲学的な漢詩を書いた女医の生涯と作品を紹介する。(藤原書店 3200円+税)