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「人口革命」平野克己著

 高齢化の日本だけじゃない。21世紀は地球全体で人口に大異変が起こりそうだ。

 太古の昔から人類は自然環境に適応しながら生存し続け、ゆっくりと個体数を増やしてきた。近代に入るまで、人類の人口増は1%にも満たない程度だったのである。

 しかし18世紀後半から最初はブリテン島から人口増が始まり、20世紀初頭にはそれまでの1世紀間で人口は3倍近くにまで膨れ上がった。イギリスがアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどに版図を広げたのは人口増の勢いを得たからだったのだ。しかしいま、イギリスはもとより、世界中で人口減少の波が急激に高まっている。

 著者はベテランのジェトロ(日本貿易振興機構)分析官。特に注目するのがアフリカだ。世界の先進国が軒並み人口減少と高齢化に苦しむ一方、アフリカでは人口は増え続け、人口増加率は1951年で1.5%だったのが78年には約2倍の3.1%にまで上昇。80年以降では大体2.6%で安定的に推移している。

 その結果、やがて地球全体は「アフリカ化する人類」(副題)に占領される見込みなのだという。

 もともとホモ・サピエンスはアフリカから世界各地に広まった種だと考えるなら、これは象徴的なことかもしれない。 (朝日新聞出版 2310円)

「人類超長期予測」ジェニファー・D・シュバ著、栗木さつき訳

 著者は人口動態と安全保障の専門家。世界情勢をめぐって米国政治に強い影響力を持つ外交問題評議会のメンバーで国防総省のコンサルタントも務めるという。

 そんな著者が注目するのが国別の出生率の違い。開発途上国の出生率は世界全体で1分間に240人。これに対して先進国はわずか25人だ。世界の最貧困地帯ではいまだ出生率が高いのである。

 著者によれば人口転換の第1波は出生率・死亡率とも緩やかに低下する。第2波では高齢化の速度がぐんと速まるが、一因は死亡率の低下がスピードアップしたためだ。中国やイランでは、公衆衛生が発達したため高齢化が速まったという。

 気になるのは著者が繰り返し日本の高齢化に言及していること。現在、日本の人口の半分が48歳以上で世界一の高齢国。2060年ごろには何と全体の40%が65歳以上になる見込み。「このまま高齢化が進めば、やがては国が完全に消滅するかもしれない」というのだ。 (ダイヤモンド社 1980円)

「人口大逆転」チャールズ・グッドハート、マノジ・プラダン著、澁谷浩訳

 数値目標を掲げると、人は数値の達成だけに専念した挙げ句、数値合わせの不正を犯すようになる。これが有名な「グッドハートの法則」。本書はその命名者で英国の大物エコノミストが過去30年とこれからの未来30年を見渡した景気の長期分析の書だ。

 1990年からの約30年間、世界の人口は労働共有の点から見て理想的だった。豊富なWAP(労働年齢人口)を擁した中国が世界経済に進出し、2億4000万人以上という驚異的な人数を加えたからだ。しかも、ソ連崩壊で東欧圏も世界貿易システムに再統合され、先進国では女性の社会進出も加速した。しかし、いまや中国を含む世界中に「少子高齢化」という名の人口構成の大逆転が押し寄せつつある。この波を阻止することは中国にもできない。これまで豊富な労働人口はデフレ圧力をもたらしたが、これからは世界的な人口高齢化がグローバル化の後退と相まってインフレ圧力を高める。コロナ禍はこの速度を上げたと結論付けている。 (日本経済新聞出版 3300円)

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