「東京の美しいドボク鑑賞術」北河大次郎、小野田滋ほか著
「東京の美しいドボク鑑賞術」北河大次郎、小野田滋ほか著
関東大震災から復興を遂げた1930年、かの川端康成も、船から見上げた橋の鉄骨の組み合わせに美を感じたと書き残しているそうだ。
本書は、その道の達人たちが、私たちの暮らしを支えるさまざまなインフラ(=ドボク<土木>構造物)の見方や推しポイントを、多くの写真やデータとともに解説してくれるガイドブック。
東京には、日本や世界に1つだけという橋がいくつかある。東京ゲートブリッジ(2012年開通)もそのひとつ。
2頭の恐竜が向かい合っているように見えることから「恐竜橋」とも呼ばれるこの橋は、両側のトラス部分と中央の桁橋(ボックス桁)を連結させた「トラスボックス複合構造」で造られている。
橋が架かる地点は東京港の玄関口となっており、出入りする大型船の航路を確保するため幅300メートル、海面から橋桁の下端まで50メートル以上の大きな空間が求められる。一方で近くに羽田空港があり空域制限のため海面から100メートル以上のものは建設できず、このような特殊な形の橋ができたという。
そのほか、古くは鎌倉時代に創建されたと思われる羽村市の逆円錐形の井戸「五ノ神まいまいず井戸」や、当時の水循環システムの要だった江戸城の外濠の名残「新見附濠・牛込濠」、大正時代に造られた日本初の近代的な下水処理施設「旧三河島汚水処分場」、そしてラーメン構造や曲線桁などの最先端の技術で橋桁を極限まで減らし、技術史上の「結節点」となった首都高速「江戸橋ジャンクション」など、70余りのドボクをエリア別に紹介。
見慣れたインフラの知られざる技術の凄さや奥深い歴史を知り、改めて見に行きたくなった。東京散歩のガイドブックとしても最適。
(エクスナレッジ 1848円)