「女たち三百人の裏切りの書」古川日出男著
「女たち三百人の裏切りの書」古川日出男著
内裏の警固を担う近衛府の中将建明の愛人・紫苑の君の邸宅で僧らによる加持祈祷が続けられる。紫苑にとりついた最後の物の怪が調伏され15歳の憑坐(よりまし)、うすきに移される。憑坐とは病人から物の怪を移すために用意された人間で、病気治しの験者は、憑坐に正体を名乗らせてから退散させる。うすきに移された物の怪は、阿闍梨に正体を問われ、100余年前にこの世を去った紫式部だと名乗る。紫式部の死霊は、自分の死後に源氏物語の宇治十帖が別人によって書き改められ、この俗世に流布していることに耐えられず現れたと語る。そして問われるまま、うすきの口を通じて本当の宇治十帖の物語を語り始める。
読売文学賞と野間文芸新人賞をダブル受賞した全く新しい源氏物語の誕生。 (新潮社 1155円)