(11)針は常に布を離れず布の中を進む
おしまは檜台の表面を撫でながら、手間賃は師走の餅代か、国松のお年玉という形で渡そうと思った。
おしまは木綿の反物を台の上に広げた。大伝馬町の米問屋から頼まれた、使用人のお仕着せ用の生地だ。十人分ある。普通なら全部縫い上げるのに、十日近くかかる。
おしまは布を裁断…
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