「総選挙」直前連載 AKB48はブラック企業なのか<3>
夢を語らせ、夢を見させながら、過酷な仕事を受け入れさせてしまう
AKBの選抜総選挙は、テレビのニュースも毎年取り上げるお祭りとして、すっかり定着した。ただ、ブラック企業問題と比較した時、このイベントはどんな意味をもつのだろう。
1位のセンター争いばかりが取り上げられがちな総選挙だが、注目したいのはそこまで人気が高くないメンバーたち。彼女らにとって、この総選挙で上位にランクインすることは、チャンスを手にする貴重な機会だ。順位次第では、地方グループ(ファンの間では「支店」と呼ばれている)のメンバーであっても、選挙直後の「AKB48」(こちらの場合は「本店」)のCDに参加することができる。ミュージックビデオやテレビの音楽番組に出演できる機会も与えられ、活躍の場が広がる。
実際、「支店」メンバーが、一度もランクインしたことがなかったのに上位に食い込んだり、4年越しで順位を上げて「本店」のシングル曲を歌う上位16人の選抜に到達するなど、毎年数人のメンバーが印象的なドラマを生み出している。
だが、肝心の「卒業」後に総選挙の効果はあるのだろうか。秋元康によれば、グループ在籍中ですら、CMや番組のキャスティングでは「総選挙10位以内のメンバーをお願いしたいんですけど……」と打診されることが増えているという(読売新聞連載コラム5月25日)。総選挙には約300人のメンバーが参加しているというのに、わずか数人ばかりにしかオファーが来ない。彼女たちが卒業して「AKB」の看板が外れた時のことは、推して知るべしである。