「総選挙」直前連載 AKB48はブラック企業なのか<1>
卒業は「ステップ」か「使い潰し」かそれが問題だ
5月25日に発生した握手会の襲撃事件によって、メンバーの川栄李奈(19)、入山杏奈(18)、警備のスタッフが負傷した。メンバーたちの精神的ショックも大きかったようだ。とくに現場を目の当たりにしたメンバーは、事件がフラッシュバックするという深刻な後遺症を明かしており、手厚いケアが求められている。
この事件を契機に、これまでも何度か繰り返されてきたように、握手券によってCDを販売する、いわゆる「AKB商法」をめぐる賛否が巻き起こっている。その中のフレーズに「AKBはブラック企業」というものがあった。
確かにAKBは多くの労働問題を抱えている。だが感情的な応酬では、重要な論点を見失ってしまう。メンバー自身のためにも、慎重な検証が必要だ。議論を冷静にするために、まずはブラック企業の定義を確認したい。
インターネットの書き込みを発祥として若者に広がっていたブラック企業という言葉は、当初は明確な定義もなく「違法行為を行う企業」程度のニュアンスだった。
しかし現在では、正社員の若者を育てようとせず、彼らを「大量離職」を前提に「大量採用」し、長時間労働やパワハラによって「使い潰す」ことがブラック企業の本質であるという共通理解が確立されてきている。この「使い潰し」によって体を壊され、うつ病に罹患(りかん)する若者が続出している。厚労省のブラック企業対策も、この認識によるものだ。