野坂昭如さんへの愛と献身…暘子夫人が語った介護の日々

公開日: 更新日:

「ウソツキ!」

 といった具合で盛り上げる。入浴中も、歌を歌うなどして、脳に元気を与えた。

「不思議なことに、日本語の歌詞は忘れるのに、フランス語の原曲の歌詞がスラスラと出るのです」という。そして、野坂さんが倒れる少し前、「はい」と一枚の原稿用紙をプレゼントされたと告白。それはエディット・ピアフ「愛の讃歌」の詩。訳詩ではなく、ピアフのメロディーにのせて、妻への思いの丈をつづったものであった。

♪空を飛ぶ鳥の 離れてまた出逢う 気ままな遊びはもう出来ないの 胸を破れて裂け 恋しい命がけ ほしいあなただけ あなたのありったけ

 野坂さんは作家になる前、シャンソンを歌っていたことがあり、「銀巴里」で美輪明宏の前座を務めたことも。その頃のメロディーや思い出が、野坂さんを生かしていたのかも知れない。

「今の世の中が自分の経験したあのときの空気、匂いに似ている」と、世情を憂い、日本の行く末に危機感を募らせていた野坂さん。ワガママ爺さんのようでいて、「私が『発言するのはあなたでしょ!』と言うと、ここだけは素直に『はい』と返事をしました」と話していた。

「先日も野坂も連れて沖縄の海を見に行ってきました。沖縄を思い続ける野坂です。『何を飲みますか』と聞くと『ビール』。娘と顔を見合わせ、孫が『ハイッ』とプレゼント。貝がらです」

 野坂さんは静かに笑っていたそうだ。

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    もしやり直せるなら、入学しない…暴力に翻弄されたPL学園野球部の事実上の廃部状態に思うこと

  2. 2

    「たばこ吸ってもいいですか」…新規大会主催者・前澤友作氏に問い合わせて一喝された国内男子ツアーの時代錯誤

  3. 3

    永野芽郁は疑惑晴れずも日曜劇場「キャスター」降板回避か…田中圭・妻の出方次第という見方も

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    「高島屋」の営業利益が過去最高を更新…百貨店衰退期に“独り勝ち”が続く背景

  1. 6

    かつて控えだった同級生は、わずか27歳でなぜPL学園監督になれたのか

  2. 7

    JLPGA専務理事内定が人知れず“降格”に急転!背景に“不適切発言”疑惑と見え隠れする隠蔽体質

  3. 8

    「俳優座」の精神を反故にした無茶苦茶な日本の文化行政

  4. 9

    (72)寅さんをやり込めた、とっておきの「博さん語録」

  5. 10

    第3の男?イケメン俳優が永野芽郁の"不倫記事"をリポストして物議…終わらない騒動