「ヒガンバナ」で好演 “特殊能力刑事”は堀北真希の真骨頂
【連載コラム「TV見るべきものは!!」】
「ヒガンバナ~警視庁捜査七課~」の主人公・来宮渚(堀北真希)は、異色の女性刑事だ。事件現場に残る犯人や被害者の強い感情にシンクロ(同調)して、彼らの声が聞こえるのだから。死者と会話が出来た「BORDER」(テレビ朝日、14年)の小栗旬にも負けない、いわば“特殊能力刑事(デカ)”である。
この設定、並の女優だと、嘘くさくて見ていられなかったはずだ。しかし堀北には、この特殊能力をもつ偏屈な刑事がよく似合う。むしろ普通のパイロット(「ミス・パイロット」フジ、13年)や、普通の看護師(「まっしろ」TBS、15年)のほうがどこか浮いていた、というか居心地が悪そうだった。現実とは違う、フィクショナルな存在をリアルに演じられる女優なのだ。
また、このドラマでは大地真央、檀れい、YOUら、“濃いめ”の女優たちの競演も見ることができる。中でも堀北に振り回される、正義感いっぱいの相棒が、発泡酒のCMで世の男たちを振り回しているはずの檀れいというのが苦笑いだ。
だが、それ以上に興味深いのは、動画での犯罪予告、スマートフォンを使ったいじめ、そしてカリスマ主婦ブロガーの実相など、“ネット社会の裏面”をストーリーに取り込んでいることだろう。社会の合わせ鏡としてのドラマという意味で、意欲的な一本といえる。
(上智大学教授・碓井広義=メディア論)