<第1回>歌えと言われかたくなに拒んだ「酒と泪と男と女」
「30歳で余命10年と宣告されて以来、飲んでもビール1杯程度。甘党で、大阪の法善寺横丁でよく夫婦ぜんざいを一緒に食べたのを覚えています」。歌手・河島英五の次女で、同じく歌手の河島亜奈睦(36)に父の酒について聞くと、そう言って笑った。河島が48歳で亡くなって、15年。骨太で男くさいイメージとはちょっと違う実像と代表曲について語った。まずは「酒と泪と男と女」。
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あの曲は父が18歳のとき、親戚の集まる席でつくったそうです。女は炊事場でお燗を温め、料理をつくり、男たちは居間で酒を酌み交わす姿をみて、男とは、女とは何だろうと思いを巡らした。お酒を飲みながら……ではなく、世間から「酒も飲めないガキがつくったのか」と思われないよう、1歳サバを読み、19歳のときに完成させたことになったそうです。
下戸だったわけじゃありませんよ。若い頃は浴びるほど飲んだり、ステージでビールを口に含んでブワァ~って客席に向かって吹いたりしていましたし。
ただ、生まれたときから体が丈夫じゃなく、いつ亡くなってもおかしくないくらいひ弱でしたから、お酒も声量も、後からつくり上げたものだったらしい。体育の授業に参加できず、同級生のように飛び回ることもできなかった分、エジソンから何から図書館の本を片っ端から読み、空想したりしていたそうです。