天海祐希「緊急取調室」はヒロイン1人でなくチームの勝利
天海祐希主演「緊急取調室」は、いわば刑事ドラマの“変化球”だ。通常、刑事ドラマは犯人を追いかけ、逮捕するまでを描く。それに対して、このドラマは容疑者との勝負がテーマだ。いかにして容疑者に犯行を認めさせるかという取調室での心理戦である。
容疑者と取調官が密室の中で向き合う。動きも少なく退屈するかと思いきや、一気に見てしまう牽引力がある。それは事件の背後に隠された、金や欲や見えなど人間の業のようなものがあぶり出されていくからで、井上由美子の脚本の冴えだ。
夫を憎む妻(酒井美紀)が、夫婦で犯した罪を隠蔽するために夫と協力し合う皮肉。また犯罪者の娘として生きてきた女性教師(矢田亜希子)が抱える社会への恨み。
そんな容疑者たちに対し、天海祐希をはじめ大杉漣、でんでん、小日向文世といったメンバーがさまざまなアプローチで揺さぶりをかけるのだ。昔ながらの「北風と太陽」作戦はもちろん、突然「敵が味方になる」ことで容疑者をかく乱したりもする。
また3年前の第1シーズンにあった、天海演じる真壁有希子刑事の私生活にまつわるエピソード(刑事だった夫の殉職など)を今回は省いたことも功を奏している。目の前の事案により集中できるからだ。ヒロイン1人の力ではなく、あくまでもチーム力による勝利。その快感も大きい。