躁鬱状態の林家きく姫を救った林家木久扇師匠のひと言

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 1年通ったものの、あまりの壁の高さに不安を覚えていた春休みの日曜。久々に見たのが「笑点」(日本テレビ系)でした。師匠が定番の「いや~ん、ばか~ん」を歌っていました。そこでハタと気付いたんです。

「そういえば、これはジャズの『セントルイス・ブルース』の替え歌だ。あの名曲をこんなふうにアレンジしちゃうなんて、すごい発想! アームストロングもビックリ! すごく楽しそう!」

 それがきっかけだったんです。

■楽屋で学んだ「気配り」

 こうして入門を許されたのが1987年4月。でも、落語のイロハのイの字も知らないまま、師匠を含めて落語を見たことも聞いたこともないのに弟子入り志願したのですから、ホント、世間知らずというか無謀でしたよね。6カ月の見習を経て前座を約4年。この間は落語家になるためと同時に、人間としての修業、気配りを学びました。

 寄席に入ると、楽屋で出演される方々のお世話をするのですが、一番大切なのは気持ち良く高座に上がっていただくこと。きちんと着物を畳み、飲み物をお出しする。冷たい水がいいのかお茶か、濃いか薄いか、一人一人の好みも覚えなくてはなりません。出囃子の太鼓も打ち方が違いますしね。

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