小島慶子<上> 忖度の時代に「直言」を全うする意義とは
ただ、メディアで発言する者として、世の中の空気がギスギスしたり、人が傷ついたり嫌な思いをしたりしないように心がけています。放送局の社員だったこともあり、公の場で発言することの影響力や意義について考える習慣がつきました。バラエティーだろうが報道だろうが、テレビの発言はショーであり、日常会話とは違います。
私自身そうですが、自宅でテレビやラジオを見聞きする時って、着慣れた普段着でリラックスして、無防備な状態であることが多いですよね。身構えていないぶん、良いことも悪いことも心に刺さりやすかったりする。テレビの出演者同士は了承済みのじゃれあいのつもりの会話でも、表現次第で人を不快にしたり、差別を助長することがあります。
そうそう、たまに「毒舌キャラで」とお願いされることがありますが、何とかキャラっていうのもよく分かりません。思っていることを発言するだけで「毒舌」だなんて、ずいぶん安易なネーミングだなと(笑い)。「毒舌」は、高い技術が必要なんですよ。ただ思うことを言うのは、「直言」です。私はそっち。だからときどき、「あの……毒舌の意味、辞書で引きました?」って尋ねてます。齢44、いろいろ考える今日この頃です。
(<下>につづく)