倉本聰氏 TVの現状を危惧「視聴者の想像力を消している」
春から半年間にわたってテレビ朝日系で放送された帯ドラマ「やすらぎの郷」。俳優や歌手、脚本家などテレビの世界で活躍した人だけが入居できる老人ホームという異色の舞台設定が話題を呼び、多くの視聴者を楽しませた一方、若者向けドラマばかりのテレビ界に一石を投じる作品となった。生みの親である脚本家の倉本聰氏(82)がいまのテレビ界が抱える問題点とともに2017年の世相を振り返り、総括する。
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この1年はスキャンダルな報道が目立ちましたが、なかでも最も印象的だったのは、豊田真由子前衆院議員についてのテレビ報道ですね。暴行現場の映像は一切映されず、「やめてください、やめてください。……ボコッ」といった音声だけが延々と流れました。多くの視聴者は、あの声を聞くたびに、哀れなオジサン秘書の風貌や表情を想像したのではないでしょうか。
あの報道は一種のラジオドラマであり、音声を聞いた人の想像力を膨らませ、「像」を結ばせた。多くの観客が情けを乞う声の主に感情移入し、言葉は悪いかもしれないけれど、楽しんでいたはず。図らずもドラマが持つ本来の面白さを表現していたんです。