倉本聰氏 TVの現状を危惧「視聴者の想像力を消している」
翻って、いまのテレビは視聴者の空想力や想像力をことごとく消してしまっています。お客さんはあれこれ想像したいのに、作り手は分かりやすさを求めるがあまり、あらゆることが説明過多になっている。耳から入る情報が頭の中で像を結ばせる楽しみを殺してしまっているような気がします。作り手の思考や思慮のなさが、どんどんテレビをつまらなくしている格好です。
テレビ黎明期は、ながら族でも分かるようなドラマを作れと指示する一派がいて、向田(邦子)さんや(山田)太一さんや僕はそれに反発した。ながらの手を止めさせる作品を作ってやろうっていう反発心が、当時の僕らのテーマだったような気がします。ところが、ながら志向は年を追うごとに現場に浸透し、いつの間にか「観客はバカだ」という前提まで定着してしまった。
その結果、どうなったか。テレビはコマーシャルの前後に、同じ内容を執拗に繰り返す手法を多用するようになっています。あれほど視聴者をバカにした話はありません。俺は認知症じゃないぞと言ってやりたくもなるわけです。
テレビが生まれたとき、大宅壮一氏は一億総白痴化が始まると説きましたが、放送開始から64年がたった今こそ、改めてその意味を皆で問う必要があるのではないでしょうか。