24年ぶり上演も…現代の歌舞伎で幽霊モノは通用しないのか

公開日: 更新日:

 夜の部の「巷談宵宮雨」は、宇野信夫が昭和10(1935)年に六代目菊五郎のために書いたものだ。六代目の芸は息子七代目梅幸、芸養子二代目松緑、女婿十七代目勘三郎の3人が継承したが、「巷談宵宮雨」は勘三郎だけが何度も演じた。いずれは18代目勘三郎も演じたであろうが、亡くなってしまった。今回は義理の弟である中村芝翫(写真)が初役でつとめた。芝翫の父・七代目芝翫は若い頃に六代目菊五郎のもとで修業していたので、そういうつながりもある。初役なのに、自分のものにしていた。

 芝翫と尾上松緑、中村雀右衛門の3人が主役で、前半は喜劇仕立てで笑わせ、最後は幽霊の出てくる怪談となる。しかし、怪談になっても客席は笑いに包まれていた。いまの観客には、幽霊は怖くないのだ。芝翫が幽霊になって出て、雀右衛門が怖がると、笑ってしまう。これは役者のせいではない。幽霊の話が怪談として成立しないのが現代なのだ。面白い芝居なので、今後も上演してほしい。

 (作家・中川右介)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人原前監督が“愛弟子”阿部監督1年目Vに4日間も「ノーコメント」だった摩訶不思議

  2. 2

    巨人・阿部監督1年目V目前で唇かむ原前監督…自身は事実上クビで「おいしいとこ取り」された憤まん

  3. 3

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  4. 4

    肺がん「ステージ4」歌手・山川豊さんが胸中吐露…「5年歌えれば、いや3年でもいい」

  5. 5

    貧打広島が今オフ異例のFA参戦へ…狙うは地元出身の安打製造機 歴史的失速でチーム内外から「補強して」

  1. 6

    紀子さま誕生日文書ににじむ長女・眞子さんとの距離…コロナ明けでも里帰りせず心配事は山積み

  2. 7

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  3. 8

    メジャー挑戦、残留、国内移籍…広島・森下、大瀬良、九里の去就問題は三者三様

  4. 9

    かつての大谷が思い描いた「投打の理想」 避けられないと悟った「永遠の課題」とは

  5. 10

    大谷が初めて明かしたメジャーへの思い「自分に年俸30億円、総額200億円の価値?ないでしょうね…」