エンタメに競合なし 「百恵買ったら聖子買わない」はない
小劇場の世界に飛び込んで常識の違いに驚くことばかりだったとか。
「チラシ封入のために劇場に行き『交通費の精算どうしたらいいのか?』って聞いたら驚かれて。交通費なんて自腹が当然、請求するという概念すらなかったんです。全てがそんな感じで、学生の延長でした。新感線なんか19年間ノーギャラですよ、どうかしてるでしょ?(笑い)」
演劇ブームの波に乗り、東京から関西へ進出するとともに、演劇界の常識に立ち向かっていくことに。
「大阪で3000人動員した時、上岡龍太郎さんは関西の舞台事情を知らない僕たちに『関西の演劇人口は5000人しかいないから』と教えてくださいました。しかし、その数年後に第三舞台は1万人動員しました。80年代後半は東京でも2万人なんて入ることはない、というのが演劇界の常識でしたが、86年には1公演でそれを実現しました。当時は、チケットを買い求める人が紀伊国屋から伊勢丹まで長い列をつくりました。結局、演劇界の常識には、まったく根拠がなかったというわけです。エンタメに競合はありません。百恵ちゃんのレコードを買ったら聖子ちゃんは買わないということはない。よその劇団が人気だと影になるではなく、小劇場にムーブメントがなかったらもっと埋もれていただけですよ。鴻上も僕もそういう演劇界の常識にとらわれなかったですね」