名良橋晃さん「CAN YOU CELEBRATE?」とフランスW杯の関係
――当時21歳だった名良橋は、あの衝撃的な敗退を自宅のテレビで目の当たりにした。プレーしていたフジタ(現湘南ベルマーレ)は、JFL(日本フットボールリーグ)に所属。翌94年にJリーグ昇格を果たした。日本代表歴もなかったが、W杯出場を逃して打ちひしがれる選手の姿を見ながら「これは(若手の)自分たちが頑張ってW杯に出場しなければいけない」「W杯本大会で勝たなければいけない」という気持ちになったと述懐する。
ところが、夢に見たW杯の初戦を迎え、ピッチに立ってスタジアムをグルリと見渡してみると、アルゼンチンよりも日本のサポーターのほうが多かった。何だか〈自分が知っているW杯〉とはギャップがありました。
そんな中で聞こえてきたのが日本の歌だったので、なおさら「自分は本当にW杯に出てるんだっけ?」とも思ってしまったんですよ。
フランスW杯前年の97年です。ずっとプレーしていたベルマーレから鹿島アントラーズに移籍した時期、この曲がよく耳に入ってきました。ちょうどフジテレビの人気ドラマ「バージンロード」の主題歌にもなっていましたね。
当時は、新天地への期待感もありましたが、同時に日本のトップレベルのチームである鹿島で自分のプレーが「通じるのだろうか?」という不安もありました。
それから、まだ移籍に対して世間的には拒絶反応のようなものがあったので「非難されるのではないだろうか?」という心配もしていました。その2つの思いが重なり、この歌の記憶になっていました。
だから、W杯初戦のウオーミングアップのときに流れてきた瞬間、鹿島に移籍当時の〈複雑な〉思いに「通じるものがあるな」って思ったり。バラード調なんで、決してテンションが上がる曲じゃない。でも強く印象に残り、イントロを聞いただけでW杯や移籍のことを思い出します。
■安室さんの引退で僕自身も区切りができた
安室さんが引退(2018年9月)され、そのときに僕自身も、ひとつの時代の区切りができた気がしました。今の若い選手は安室さんの歌を聞く機会は減っているのでしょうか? そうだとしたら、少し寂しい気がします。
「CAN YOU CELEBRATE?」は、僕にとって、人生の節目を迎えるたびに「あぁ~また聞きたいな」って思い続けている曲なんです。
(聞き手=森雅史)