藤圭子「新宿の女」は薄幸のイメージ戦略がズバリ当たった
あれからもう7年が経とうとしている。新宿の高層マンションから飛び降りて自殺した藤圭子。62歳だった。
なぜ飛び降り自殺だったのか? その心の闇は今も分からない。最後まで私生活も素顔もベールに包まれた稀有な歌手だったが、その謎めいたところがまた彼女らしい魅力でもあった。
藤圭子のデビュー曲は「新宿の女」。17歳の美少女が、♪バカだな バカだな だまされちゃって……とドスの利いたハスキーボイスで歌う演歌は強烈なインパクトで、いきなり大ヒットした。
作詞・作曲は石坂まさを。夜の街で流しをしていた藤圭子をデビューさせたのだが、石坂は彼女の背負った暗い影にほれ込んだようだ。
その生い立ちは、岩手県一関市に生まれ、北海道旭川市で育ったが、幼い頃から、流しの浪曲師だった父母と一緒に旅回りをする貧しい生活だった。自然と本人も歌うようになり、15歳の時、北海道の素人歌謡祭で歌っていたのが作曲家の八洲秀章の目に留まり、上京。ビクターに所属した。しかし、なかなか芽が出ず、母親と一緒に浅草や錦糸町で流しを続けて一家の家計を支えていた。17歳になったとき、その原石を見いだしたのが石坂まさをだった。