川中美幸さんは20歳前に挫折…「船頭小唄」が再起の契機に
「ふたり酒」「二輪草」のヒット曲を歌う川中美幸さんにとって、二十歳になる前の挫折が、その後の歌手人生を決めた。立ち直れたのは森繁久弥がしみじみと歌った「船頭小唄」だった。
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昭和48(1973)年に春日はるみの名前でデビューしました。まだ17歳。
子供の頃から大阪ではのど自慢大会に出てはいつも一等賞をもらっていたので、この世界に入ってもすぐ一等賞になれる、そうしたら苦労して育ててくれた親に家を買ってあげることができる。そう思って、「お母ちゃん、うち建ててあげるから、好きな土地があったら探しといて」と言って上京しました。母は「ありがとう、あてにせんと待っとくわ」と言っていましたけどね。
でも、一等賞を取っている人が集まっている世界ということがわからなかったんですね。安易にデビューして挫折、2年で大阪に戻ることに。
地元では歌がうまい女の子と評判で意気揚々と東京に出てきたので、「帰りたくない」と母に言ったら、「あんた何、言うてんの。一流の事務所で一流の会社からレコード出しただけでも大変なことなのに。正々堂々と帰っておいで。歌だけが人生やないで」と言われ、とても気が楽になったのを覚えています。