中尾ミエさん「北の富士親方との約束が65歳の時に実現」
中尾ミエさん(歌手・女優)
歌手で女優の中尾ミエさんはあるパーティーで第52代横綱、北の富士親方(79)と出会ってある約束を交わした。ご覧の写真はその後、再会した時のツーショット。その経緯は中尾さんらしいユニークなものだ。
■意気投合した人に「誓約書」を書いてもらうのが私の趣味
私は人と会って意気投合すると、じゃあ、何年後かにまた会いましょうという誓約書を書いてもらうのが趣味なんです(笑い)。次に会うのは長ければ長いほどいい。だって、その間、ずっと思いがつながっているでしょ。だいたい10年後とか。これまで5人の方と誓約書を交わしました。
写真に写っているのは北の富士親方です。あるパーティーに親方がいらしていて途中で帰られるところでした。以前からすてきな人だなと思っていたので追いかけていって「お一人ですか」と私から声をかけたんです。そうしたら「一人です」とおっしゃって。それで「私も一人で来ていてこれから暇なんですけど、お食事をごちそうしてくれます?」って(笑い)。強引でしょ。でも、そんなことを言うことはめったにないんですよ。そうしたら親方が「いいですよ」とおっしゃって、六本木のある店に行って、すっかり意気投合してしまいました。
そして親方に「また何年後かにお会いしませんか」と言いました。私が70歳になった時と提案したら、親方は「70じゃちょっと年を取りすぎじゃないか」とおっしゃるので、「じゃ、私が65歳の時にささやかながら盛大なパーティーを開いてもらうのはどうですか」と言って(笑い)、本名の竹澤勝昭さんの名前で母印を押した誓約書を書いてもらい、お店のオーナーには立会人になってもらいました。
親方とは連絡先もわからないまま、それっきりお会いしていませんでした。ただ誓約書はずっと持ち歩いていて、ボロボロになりましたけど。
私が65歳の時です。舞台の巡業で北海道の旭川に行くことになったんですね。親方は旭川の出身です。友人が、親方の弟さんが旭川でちゃんこの店(「北の富士本店 櫻屋」)をやっていると教えてくれたので、店に連絡して親方の連絡先を聞いて、電話したんです。そうしたら親方もちょうどその時に旭川にゴルフのコンペで来ているというんです。
お会いできたのはこの一度だけ
親方に「約束を覚えていますよね」と言って、「ささやかながら盛大なパーティーを」と書いてある誓約書のことを話したら、「もちろん」とおっしゃって、宴会を開くことになったんです。こちらはスタッフを入れて30人、親方はコンペのメンバーが20人。お店の大広間で50人の盛大なパーティーを開いてもらいました。親方の乾杯で始まり、宴会はとっても盛り上がりました。私は「覚えていてくれてありがとうございました」とお礼を言いました。親方の弟さんも50人にはさすがに驚かれたんじゃないでしょうか。同じ時期に同じ旭川にいたなんて、よほどご縁があるんだなと思いました。
一枚はその時に誓約書を持って親方と一緒に撮った写真、一枚は親方と向かい合って股割りをしている写真です。楽しかった旭川の一夜のことは生涯忘れることはできません。ボロボロの誓約書は実行されたので処分しちゃいましたけど。
実は誓約書を実行してくれたのはこれまで親方一人なんです。貴重な経験でした。誓約書を書いてもらったのは、親方以外には一般の方です。誓約書を書いてもらうぐらい意気投合する人はそうそういないし、実行となるともっと難しい。一番初めの誓約書は名前も書いていなくてだれかわからず、約束の日に六本木のアマンドの前にドキドキしながら行ってみたら、だれも来なくて。でも、それでもいいんです。待つ10年が楽しいじゃないですか。私もちゃんとしていないといけない。ヨボヨボのおばあさんになっているわけにはいかないから。それに相手の方にも元気でいて欲しいし。
年寄りの役が増えてきて逆に忙しい
最近は高齢者向けの番組も増えてきました。女優も元気です。昔は80歳になったらメインにはなれないし、ちょい役でそんなに頑張らなくてもいいという感じだったのが、今は年を取ってもキレイだし、年寄りの役がやたら増えてきて逆に忙しい。ちょっと前までは老け役はわざと背中を丸めて黒く染めている髪を白髪にしていたのが、今は私たちがそのままで表現できるようになった。
今朝も犬の散歩がてら公園に行って鉄棒でエクササイズをやってきたけど、努力すればこんなに体をキープできるというので、私に憧れて、鉄棒をする人が増えて混み合っちゃって(笑い)。とにかく体を動かしていれば元気になる。でも、今はコロナでジムに通っていた人も行けなくて、一度行くのがおっくうになって体を動かさないでいると、もう前には戻れなくなる。免疫力が落ちて余計にコロナにかかりやすくなるんじゃないかしら。その点、女の人、おばさんは努力しています。
実は、今も誓約書をひとつ持っているんですよ(笑い)。
(聞き手=峯田淳/日刊ゲンダイ)