<65>早貴被告は2億円を無心に来た家政婦のドラ子に「可哀想」と同情した
■結託の可能性も?
そんな彼女がドラ子に同情していたのだ。まさか、2人が結託していた可能性はないだろうが、そのように邪推してしまいたくなるほどだった。
「自分が保証人になった借金が2億円あるって弁明していたけれど、彼女は自己破産をしていたとも言っていたんや。自己破産すれば保証人にはなれないから、それもウソやろうなあ」
マコやんが話に入ってきた。
「でも可哀想……」
早貴被告の口から可哀想という言葉が出たのは、最初で最後だったように思う。夫のドン・ファンが亡くなった時も「可哀想」という言葉は聞いていない。
私たちはイブの思い出を肴にしてお酒を飲んでいた。早貴被告は従業員に酒をつぐこともせず、自分の席に腰掛けて社長と話をしていたが、珍しく機嫌がいいようで白い歯がこぼれることもあった。もともと彼女は酒が好きではなかったが、この晩は頻繁にグラスに手を伸ばしていた。 =つづく