<96>精いっぱいの演技か? 早貴被告はハンカチ片手に涙ぐんだ
2018年5月30日、大雨の中で午前11時に始まった野崎幸助さんの葬儀は、出棺の時を迎えようとしていた。
「最後のお別れですから故人に縁があるものを入れてください」
斎場の係員が棺桶に横たわる野崎さんを取り囲んでいる参列者に花を手渡しながら言った。
「他のヤツらに勝手なことはさせないので、天国にいる社長も敵討ちをする私を助けてください」
今にも起きだしそうな穏やかな顔の社長に声を掛けて、私は「紀州のドン・ファン」のパート1とパート2をそれぞれ社長の顔の脇にそっと置いた。棺桶には、社長が普段着ていた薄紫の背広も入れられて、あふれんばかりの多くの花が遺体を囲んで敷き詰められた。