五木ひろしの光と影<13>山口洋子からの初電話「三谷謙君って知ってる?」
■番組関係者の1人や2人抱き込むくらいは…
「彼が勝ち抜けばね」と平尾がやんわり拒むと、山口洋子は意外にも「大丈夫よ」とにべもなく言った。平尾は戸惑った。山口洋子のことだから何か勝算があるのか? もしかしたら“奥の手”を使うこともありうる。何しろ「姫」のマダムなのだ。審査員個人の情報が集まっていたとしても不思議はなく、番組関係者の1人や2人、抱き込むくらい赤子の手をひねるようなものかもしれない。
しかし、解せないのは、なぜ彼女がそこまで、この無名の歌手のために必死になるのかということだ。
「彼がそれを望めばね」と平尾が言うと、「それも大丈夫」。
洋子はキッパリ言い切った。このとき平尾昌晃は、自分が三谷謙に渡した自宅の電話番号のメモ書きが、山口洋子のもとに渡っていたことを知ったのである。 =つづく