(3)深作欣二監督との縁…映画監督というより土木作業の現場監督に見えた
深作監督と組んだ最初の映画は「風来坊探偵 赤い谷の惨劇」である。私が映画初主演なら、深作さんも、これが初監督。共にデビュー作なのだから、やはり縁があった。
現場で接した深作監督の印象は、めちゃくちゃエネルギッシュで、明るい人だった。映画監督というより土木作業の現場監督に見えた。しかし、撮影を重ねるうちに、監督の頭の良さにうなった。どんな状況にも臨機応変に対処し、脚本もその場で自在に変更してしまう柔軟さがあった。しかも決断が速い。
現場の士気を高める術も心得ていた。
「赤い谷の惨劇」の浅間山ロケではこんなことがあった。セスナ機が墜落したという設定だから、実際に雪山にセスナを置き、オープンセットまで組んで撮影した。ところが、撮影途中で雪が降り出し、景色がつながらないため、撮り直しになったのである。
役者もスタッフも落胆していると、深作監督は照明部が持っていたカッパを借りて、いきなり、その上に乗って雪上を滑り始めたのだ。揚げ句、コブのところで大ジャンプだ。