(3)深作欣二監督との縁…映画監督というより土木作業の現場監督に見えた
これに1人、また1人と続き、いつしか誰が一番遠くまで飛べるかで競い合っていた。撮り直しですっかり沈んでいた現場の空気が一気に和んだのは言うまでもない。
実は、この映画のロケで俳優の室田日出男さんがトラブルを起こした。
深夜、泥酔した室田さんがホテルの玄関のガラスを割って外に出て、白い雪を血で染めて大暴れしたのである。
私と曽根晴美さんが室田さんを必死で押さえ、なんとか車に乗せ、病院まで運んだ。しかし、全身をガラスで切っている。縫合箇所が多い上、大量の酒を飲んでいるため麻酔が効かない。看護婦さんの力だけでは暴れる室田さんを押さえられず、曽根さんと私が力を貸すしかなかった。
怒り心頭だったのが深作監督である。
「こんなバカはいらねぇ。すぐに東京に返せ!」
結局、室田さんは出番のないまま無念の降板となり、しばらく仕事を干されることになった。
しかし、深作さんは人情と思いやりの人である。室田さんの役者としての力量も認めていた。だから、5年後に自身の監督作「脅迫 おどし」(三国連太郎主演)に起用。これをきっかけにして室田さんは名脇役としての地位を築いていった。=つづく