(8)映画「柳生一族の陰謀」の大ヒットで“柳生十兵衛=千葉真一”が定着
役者には当たり役がある。勝新太郎さんなら文句なしに「座頭市」だろうし、健さん(高倉健)なら「昭和残侠伝」シリーズの花田秀次郎、文ちゃん(菅原文太)なら「仁義なき戦い」シリーズの広能昌三だろうか。では、千葉真一の当たり役は何か。柳生十兵衛を挙げる人が圧倒的に多い。
私が初めて柳生十兵衛を演じたのは「柳生一族の陰謀」だ。東映にとって12年ぶりの時代劇で大ヒットした。これを受け、テレビドラマ化もされた。さらに映画「魔界転生」でも十兵衛を演じたから、映画ファンの間でも「柳生十兵衛=千葉真一」のイメージは強いようだ。
柳生十兵衛は徳川将軍家の剣術指南役として大名にまでなった柳生但馬守宗矩の長男である。いわば権力の中枢にいた人間なのだが、ときには父と対立し、弱者の側に立つような人間だったらしい。しかも剣の腕は父にも勝るものがあった。映画においても十兵衛と父との関係は大きなテーマになった。
「柳生一族の陰謀」で柳生宗矩を演じたのは萬屋錦之介さん。私が斬った徳川家光の首を抱え、「夢じゃ、夢じゃ」と叫ぶラストはあまりに有名だ。