川村元気「百花」国際映画祭で監督賞受賞も 名プロデューサー、名監督ならず…か?
「“面倒”な部分が描かれていない」
「作品の核を観客に委ねる不親切さと、構成のバランス、映画技法の使い方に理由があると思います」というのは映画ライターの金澤誠氏だ。こう続ける。
「たとえば過去に不在だった母親が帰ってきてから、この母子がどのような関係性で過ごしてきたのか。その遍歴ががなく、いきなり現在の2人の疎遠な感じだけを提示する。つまり多くを観客の想像力に委ねてしまうので、不親切な印象を受けます。構成に関しても、母親の逃避行の1年間に時間を割いている割には結末との関係が薄かったり、バランスが悪く、肝心な母と子のきずなが迫ってこない。溝口健二監督へのオマージュなど映画技法は随所にちりばめられ、川村監督の映画愛は感じられる。原則1シーン1カットの撮影にこだわり、長回しを使っているのは最近の倍速観賞、ストーリーだけ追う“ファスト映画”に対するアンチテーゼかもしれませんが、技法が先で、意味のある使い方とは言い難い。ファストな見方からすれば、面倒なところがなくて、流れを把握しやすいからこそ川村さんがプロデュースした他の作品は若者に支持されるのかもしれませんが」
名プロデューサー、名監督ならずか。