「レジェンド&バタフライ」の女性カメラマン芦澤明子が見た 映画界と木村拓哉・綾瀬はるか
映画を撮るのに男女の別はない
製作費20億円を投じたこれほどの大作に、女性カメラマンが起用されることは、日本映画史上初めてである。
「そういう認識がダメなんです(笑)。映画を撮るのに、男女の別はないんですから。現状を言えば、才能豊かな女性カメラマンがたくさん出てきています。『コンフィデンスマンJP』シリーズを撮影した板倉陽子さんなんて、すごくいいセンスを持っていますし、自分が同世代に生まれなくてよかったと思う有能な女性カメラマンが、今はかなりいますよ」
そうは言うが、日本映画撮影監督協会に所属する350人を超える会員のうち、女性カメラマンは20人に満たない(22年11月1日現在)。
「そんな組織も気にしない、フリーの元気な女性たちが他にいっぱいいます。かつてフィルムが主流だった時代にはカメラも大きくて重かったからそれを持って扱えるのか、迅速にフィルムを替えられるのかといった、画作りとはあまり関係のない、体力や職人的な技術が要求された。でもデジタルになって機材も小型・軽量化されているし、極端にいえばスイッチを押せば大体写る時代ですからね。そうなるとカメラマンが問われるのは、機材を扱う技術はもちろんですが、それ以上に感性なんです。これからのカメラマンは男女を問わず、感性を磨かないといけないと思います」
女性ならではの感性が必要な作品は増えるだろうが、人生の中で子供の出産・育児などに直面すると、フリーの立場では女性が仕事を持続していくのは難しいのではないか?
「私の女性アシスタントの場合には、事前にどうしても子供を保育園へ迎えに行かなくてはいけない日などを言ってもらって、その日は他の人にアシストしてもらうとか、最初からプランを作っておきます。何か突発的なことが起こった場合も、ある程度周りでカバーできる体制づくりをしていますね」