野木亜紀子と松岡茉優 二つの弩級の才能が起こす化学反応
そんなぼくが、内容もキャストもスタッフも知らずに観た『フェンス』第1話だけで、脚本の野木と主演の松岡茉優に完璧にやられた。オンデマンドは放送より先行で配信していることを知ってからはネトフリ気分で観た。最終回第5話を観終えたときは全身がシビれて茫然とした気持ちに。すごい才能に触れた興奮。その作品が与えてくれる気づきと感動。シビれを反芻しながら「松岡茉優さんってすごい俳優」だの「野木亜紀子の時代!!」といった賛辞をツイッターに並べ立てる始末。周囲に「そんなに野木亜紀子ファンだっけ?」と訝しがられたのも無理はない。
番組公式サイトの〈みどころ〉にはこうある。「日本ドラマ史上初の肌の色の違う女性バディが、復帰50年を迎えた沖縄を舞台に性的暴行事件の真相を追う、エンターテインメント・クライムサスペンス!!」。この惹句に偽りはなく、『フェンス』は謎解きが魅力の事件ドラマとして、つまりエンタメとしてすばらしいとまず強調しておきたい。だがもちろんそれだけではぼくも騒ぎません。このドラマには驚くほどたくさんの社会的問題が織り込まれているのだ。日本が長年沖縄の地と人に押しつけてきた問題。性暴力。性的搾取。人種差別。経済格差。家父長制などなど。残念ながらいまの腰抜け地上波じゃムリ。絶対ムリ。