“TKサウンド”のブレーン喜多村豊氏の現在地 小室哲哉と歩んだ30年と今後のビジョン

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松本隆×小室哲哉のコラボなら…の気持ちで中森明菜の「愛撫」が誕生

 ミリオン連発のTKサウンドのブレーンとして目まぐるしい日々を過ごした喜多村氏は、新たに「声優Neo歌謡フェス」を手掛けているという。

 小室君は無から有を生み、コストは食事代と電気代ぐらい。自分の頭を指さし「全部このなかにあるじゃん?」って言うんです。今までモノを介して利益を生み、関わる会社を三方よしにするのが自分の商いだっただけに、彼という同級生のおかげで発想の自由度は格段に広がりました。

 この前、週刊文春で僕の名前が出ていたのは、1994年にリリースした中森明菜さんの「愛撫」を小室君が手掛けた話でした。明菜ちゃんが移籍第1弾「愛撫」をリリースするまでの話ですが事実とはかなり違っていましたね。実際は、自殺未遂騒動、事務所移籍でボロボロだった明菜ちゃんを何とかして欲しいと当時の事務所の社長に頼まれ、白金の店でお会いした。作詞は松本隆さんだそうで、僕は松本隆×小室哲哉のコラボなら見てみたいという気持ちもあり、持ち帰って小室君に話しました。すると「うん、やるよ」とGOが出て、「愛撫」が生まれたのです。

 小室君の曲の特徴は、打ち込みでものすごく音数が多い。編曲しても小室カラーがわかるのはそういう背景もあります。彼は映像を見てそれに合わせる音楽を作るのが非常に得意で、一連の「シティーハンター」の楽曲もそういった才能を発揮した一例です。実は97年ごろ、小室君は世界進出を考えていて、提携先の選択肢にディズニーもあり、もしかしたらディズニー映画の音楽を日本人で初めて手掛けることになるかもしれなかった時もあったんですよ。

 小室君が有名になればなるほど、間に取り入る人たちが僕に会わせないようになり、いつしか僕も怖い人に仕立て上げられていました。でも、僕は芸能界の人間ではないし、交渉をする上で「俺のバックには……」などと自分より強い人の力を借りれば、今度はその強い人から足をすくわれるし、僕だけじゃなくて小室君を巻き込むことになる。だから、たとえ相手が怖かろうがそうでなかろうが自分で対処します。後ろめたいことは致命傷になるので絶対にしません。あくまで流通に軸足を置く普通の経営者です。そういう普通の感覚が小室君の音楽ビジネスを健全に推し進め、収益を上げたんだと思います。

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