三浦英之著「太陽の子」、この書き手は愚直なまでに「ペンは剣よりも強し」を信じている
本書は、戦後日本が経済成長のもとに隠し続けてきた秘密のひとつを現代に広く認知させるのみならず、それに翻弄された人びとの救済まで試みるルポルタージュだ。
1964年東京五輪、翌年の証券不況を経ての「いざなぎ景気」。その時代、アフリカ中部の一大資源国コンゴ民主共和国(旧ザイール)に、日本を代表する鉱物資産企業「日本鉱業」(日立製作所や日産自動車を生みだした父祖企業)が巨大な銅鉱山開設プロジェクトを展開していた。そこでは現地女性と日本人男性とのあいだに多くの子どもたちが生まれた……。
ともすれば日本人読者が罪悪感を抱きかねない、重苦しいテーマを語りはじめるにあたって、著者がまず引用するファクトはツイッター(現X)。現代を象徴するツールを早々に登場させることで、このテーマがカビ臭いものではなく今なお続く問題であることを端的に示す。2016年、特派員として南アフリカのヨハネスブルクに駐在していた三浦さんのツイッターに、不可解なメッセージが投稿されたのだ。
〈朝日新聞では、一九七〇年代コンゴでの日本企業の鉱山開発に伴い一〇〇〇人以上の日本人男性が現地に赴任し、そこで生まれた日本人の子どもを、日本人医師と看護師が毒殺したことを報道したことはありますか〉