映画「パスト ライブス/再会」の“大人のラブストーリーの最高傑作”なる惹句に待った!
オリジナル脚本と監督を手がけたのは、これが長編デビュー作の韓国系アメリカ人女性セリーヌ・ソン。映画監督ソン・ヌンハンを父にもつ彼女は、この物語が実体験から生まれたことを明らかにしている。ノラを演じるのはアメリカ生まれのグレタ・リー(ファッショニスタとして有名)、ヘソンを演じるのはドイツ生まれのユ・テオ。
実際に観終えて感じたことを、三太くんにならってぼくも率直に言ってみようか。
なーんだ、「恋愛映画」ではないじゃん。もちろん恋愛の要素は大きいよ。だが監督が重心を置くのが恋愛ではないことは明らか。日本の配給会社が作成したポスターの「君にずっと会いたかった」「忘れられない恋があるすべての人へ」といった甘い惹句(じゃっく)は、ミスリード狙ってますよ。「せつなさが溢れる大人のラブストーリーの最高傑作」にいたっては待ったをかけたい。みなさんはどうかダマされないように!
ではどんな映画か。ぼくは「移民映画」と答える。根拠もある。だってこれ、『ミナリ』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』といった、悩み多きアジア系米国人の心のありようを描き、(ここが大切なのだが)商業的にも批評的にも成功を収めている気鋭の映画製作/配給会社「A24」の作品なんだから。