俳優・山口馬木也さん「藤田まことさんは『飲め、飲め』と息子のようにかわいがってくれた」
普段は家飲みでお酒の味比べ
このたび「侍タイムスリッパー」は日本アカデミー賞で最優秀作品賞、僕自身も優秀主演男優賞をいただきました。
「侍タイムスリッパー」の公開は池袋のシネマ・ロサ1館からスタートしました。藤田さんは東京・池袋のお生まれで、出生地はシネマ・ロサの近くだったそうです。藤田さんは亡くなる前はご病気をされました。本当はもう一本舞台をやる予定でしたが、できなくなり、そのことを気にしていた。鼻からチューブを入れて点滴をしている状態の時に、僕に「舞台できなくてごめんな。この借りは必ず返すから」とおっしゃっていた。それが最期の言葉でした。その藤田さんがお生まれになった場所から公開され、多くの賞をいただくことができ、あの時の言葉が「これかも」と思っています。藤田さんとの見えないつながりを感じています。
藤田さんはいつもご自身のことは「三文役者」とおっしゃっていた。でも、そうそうたる方々が「剣客商売」に出てらして、誰もが「藤田さんはすごい」と言って帰っていかれた。藤田さんはお笑いや歌から入ったから、根っからの役者じゃないと思っていたところがあったんでしょうね。「三文役者」と卑下したような言い方をしたのは、そのせいだと思います。
僕も役者になりたくて役者になったわけじゃない。ですから、どこまでいってもスカスカした感じがしている。役者としてなかなかうまくならない。こうしていろんな映画賞をいただき、「三文役者」と言っていた藤田さんの気持ちが少しだけわかる気がします。
「侍タイムスリッパー」の撮影ではほとんど飲み歩かなかったですね。ホテルに一人でいることが多かった。コンビニで飲み物を買ってきて、部屋飲みしたり。基本、付き合いが悪いし、安田淳一監督もそんなに飲まない人だから。パッとやったのは唯一、大阪に行った時ですね。映画の中で住職の奥さんを演じた紅萬子さんが大阪で店をやっていて、5、6人でお疲れさん会をやりました。普段は家で飲むことが多いですね。日本酒とか焼酎、ワイン。お酒の味が嫌いなわけじゃないので、封を切ってどんな感じか、飲んでみるのが好きです。
最優秀作品賞をいただき、授賞式の後はみんなで思いっきり盛り上がりました。改めて何かをやるのか、監督やみなさんと相談します。
(聞き手=峯田淳)