いしだあゆみさんのこと…平仮名芸名、大阪の実家、芸能史に残る離婚会見、歌手と女優
3月11日に亡くなったいしだあゆみさん(享年76・以後敬称略)の本名は石田良子。デビュー当時、芸名を“平仮名”にする女優はまれだった。三田佳子、松坂慶子といった漢字に慣れていたせいか、違和感もあった。映画やドラマのポスター制作者はこんな話をしていた。
「出演者のほとんどは漢字。平仮名が入ると字の大きさなど、隣の名前とのバランスを取るのが難しかった」
毎日のように画面に出る“いしだあゆみ”の名前に「親しみやすさを覚える」「やさしそうな人」と次第に定着していった。いしだのマネジャーを長く務めていた野田義治氏が立ち上げた「イエローキャブ」。グラドルのひとりを“かとうれいこ”と平仮名にした。
いしだが切り開いた平仮名路線は次世代の女優に引き継がれ、近年は“貫地谷しほり”“満島ひかり”と名を平仮名にする女優が増えていった。
いしだの実家は大阪・池田市。駅前の商店街の一角で母親が喫茶店をやっていた。何度となく取材で訪ねた。お店にお客として入れるので門前払いされることはなかったが、母親も手慣れたもの。毅然と「私から話すことはないわよ」と娘の話はしなかったが、雑談には快く応じてくれる気さくな大阪のおばちゃんだった。