津波で肺炎死亡のリスクが増加する
東日本大震災から5年が経ちました。地震と津波が与えた壊滅的被害は、今もなお影響を及ぼしています。津波は物理的被害だけでなく、健康へも影響を与えることが知られており、「津波肺」と呼ばれる肺炎はその代表的なものです。海水に含まれる病原性微生物や粒子状物質を吸い込んでしまうために発症すると考えられています。
東日本大震災による津波と肺炎発症の関連を検討した研究が、英国医師会誌の「オープンアクセスジャーナル」(2016年2月23日付)に掲載されています。
この研究は日本の平均的データから予測される肺炎死亡者数と、東日本大震災後の肺炎死亡者数を比較したものです。対象となったのは福島県、宮城県、岩手県に在住している約570万人でした。なお、肺炎死亡のリスクは内陸部と沿岸部に分けて解析されています。
震災後1年以内に6603人が肺炎により死亡。震災から1~12週目にかけて肺炎による死亡が増加しました。震災から2週目の肺炎死亡は、内陸部で約1.5倍、沿岸部では約2.5倍と、統計的にも有意に上昇しています。