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中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

扇千景さんは切除手術 非浸潤性乳管がんなら“待機”もあり

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 では、何が問題か。DCISは、上皮の外にがん細胞が浸潤していませんから、リンパ節や遠隔転移の可能性はありません。通常の「部分切除+放射線治療」、乳房全摘術までもが選択されることがありますが、「死に至る病気」ではないのです。DCIS診断後20年以内の乳がん死亡率は3・3%で、がんではない一般集団の死亡率とほぼ同じ。治療による延命効果はほとんどありません。一番大きなリスクは「過剰治療」なのです。

 仮に扇さんがDCISだとした場合、治療によって、乳房内の再発が抑制される可能性はあるものの、(生きているかどうかは分かりませんが)20年後、すでに低い死亡リスクがさらに低くなることはないと考えられます。

 それでもDCISに過剰治療が行われるのは、わずかな割合で病変が浸潤性になるという懸念から。それでDCISと診断された女性のほぼ全員が、何らかの治療を受けているのです。

 この状況は、男性の前立腺がんと似ています。検診で発見された早期前立腺がんの一部は、進行が遅く、治療せず放置しても問題ないケースがあることが国内外の研究で明らかになり、「待機療法」も一般的になっています。DCISも同様の考え方が広がる可能性があるのです。DCISという「がんもどき」は、その名称から「がん」という言葉を外すべきだという議論もあるのですから。

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