乳酸菌を活用 世界初の経口薬によるHPV標的免疫療法を開発
「欧米の受検率は70%台ですが、日本は20%台と低いのも問題です。ただし、検診はがんを予防できても前がん病変の予防にはなりません。前がん病変が早い段階で見つかっても、その治療法は『子宮頚部円錐切除術』という手術しかありません。この手術をした女性は、将来の妊娠時に早産になるリスクが約3倍高まるのです」
川名教授がワクチン接種を強く勧めるのはそのためである。一方で、川名教授は長年かけて前がん病変を薬で治す「HPV標的免疫療法」を開発。今年度中に第Ⅰ相、第Ⅱ相の臨床試験を始める予定という。HPVを標的としたがん免疫療法は、これまでも海外で7つほど試験が進められてきたが、どれも実用化に至っていない。しかも、他の研究は注射薬だが、開発したのは経口薬。粘膜免疫を利用した標的免疫療法は世界初だ。
■ 免疫組織のない生殖器に代わって腸免疫を強化
「大半の人がHPVに感染しますが、がんにならないのは免疫で抑えているからです。免疫の働きが弱いと前がん病変ができるのです。しかし、生殖器には免疫をつける構造がなく、それを担っているのが腸免疫です。だったら腸へ免疫抗原を運んでやればいい。その“運び屋”に用いたのが乳酸菌です。乳酸菌の粉末をカプセルで飲むだけなので、副作用はほとんどありません」