臓器に情報を伝達し体調を微調整する“メッセージ物質”
「数多くのホルモンが全身をめぐりますが、それぞれ厳格に決められた特定の細胞だけに作用します。それは、各ホルモンの命令を受け取る特定の細胞(標的細胞)には『ホルモン受容体』があり、カギとカギ穴の関係にあるからです。ただし、1つのホルモンに対する受容体は1種類だけでなく、全身に複数存在する場合が多く、受容体ごとに異なる作用を及ぼしているのです」
例えば、「オキシトシン」というホルモンは分娩(ぶんべん)時の子宮収縮や授乳時の乳腺刺激をするが、男性でも分泌されていて、子供やパートナーへの愛情を高める作用をする。
ホルモンは感情をも動かす力を持っているのだ。
また、健康な人のホルモンは常に分泌量を適正に保つために、精密な仕組みで調節されている。
「甲状腺ホルモンを例にすると、視床下部から出たTRHが下垂体に到達するとTSHが出て、血流にのって甲状腺に届くと甲状腺ホルモンが分泌されます。しかし甲状腺ホルモンは、逆にTRHやTSHを抑える働きを持っていて、これを『負のフィードバック』と呼びます。甲状腺ホルモンが多過ぎたり、不足すると負のフィードバックが強まったり、弱まったりします」
ほとんどのホルモンが同じような調整の仕組みを持っているという。